「作業療法」と聞くと、手作業(=手芸をする?ネジしめ作業?木工仕事?)を通して手先のトレーニングをする、というイメージを持たれる方も多いかと思います。
確かに、編み物や革細工、陶芸などの「作業活動」を、薬や手術のかわりに治療手段として使いながら、腕や手の運動・感覚機能、作業の工程を理解し記憶する認知力、指導者とコミュニケーションする力などを総合的にリハビリすることも「作業療法」のひとつではあります。
上記に加え、「作業活動」を"実生活で行っているすべての諸活動"としてとらえ、トイレにいくこと・ごはんを食べること・服を着替えることなど、日々の生活の中で欠かせない活動もリハビリの対象とします。
障がいをもつ以前と同じように出来なくなった日常生活活動について、具体的にリハビリしながら普段の生活の中で行えるようにしていきます。
「作業療法」ってどんなリハビリ?
なぜ「作業活動」をおこなうの?
例えば、テストのために頭に詰め込んだ英単語や数式はすぐに忘れますが、大好きな歌手の歌や趣味のコレクション、あるいは株の銘柄などなど・・・興味があって楽しいことは絶対に忘れない等、人間にとって "興味を持って自ら取り組む" "楽しい・嬉しい・気持ちいい" 時ほど、脳にスムーズに刺激が入り、より物事が身につきやすくなると言われています。
ですから、単純に手足を動かす・筋力をつけるというトレーニングと同時に、それらの機能を使って、作品を製作する、箸でごはんを食べるなど、自ら目的を持ち楽しみながら活動を行うことがより効果的なリハビリにつながります。
「手足の力がついてきたので、孫の誕生日にキーホルダーを作ろう!」と作品製作に取りかかる⇒指先の感覚やつまむ力も自然にトレーニングされる⇒作業療法士はトレーニングで身についた機能が使いやすく、さらに機能が向上するようなハンドリング(徒手的な介助のこと)や環境整備・声かけを行う・・・このようにして効果的なリハビリの循環が生まれます。
また、「できた」という達成感をもつこと・周囲の人から賞賛してもらうことが、さらなる生活・リハビリへの意欲につながります。
特に子どもにとって楽しみながら努力して達成感を得ることは、自信をもつこと(=自己肯定感・有能感)につながり、心身の発達にとって非常に大切なことです。
手が動くこと・歩けることはあくまで生活していくための手段であり、変化した身体機能や作業進行能力でいかに毎日の生活が豊かになるか具体的な目標をもって治療をすすめます。
「作業療法」で用いる具体的な「作業活動」ってどんなもの?
日常生活で行われる「作業活動」は年齢によって様々ですから、「作業療法」で選択される「作業活動」も対象となる方の年齢によって変化します。
また、その人個人の生活暦によっても大きく変化します。
上記のように多様な「作業活動」の中から、年齢、障がい特性、対象となる方の個性、生活環境などを総合的に評価して、適切な「作業活動」を選択し、それを治療の”手段”や”目的”として使いながらリハビリしていきます。
たわだリハビリクリニックで行う「作業療法」
たわだリハビリクリニックは、主に総合病院やリハビリ専門病院から自宅は帰り、障がいと共に生活を始めた方々(維持期に入った方々)や、発達の過程で障がいをもち、自宅での生活が軸となっているお子さんたちに利用していただくクリニックになると考えています。
ですから、機能回復をめざす作業療法はもちろん、「生活すること」をキーワードに、障がいを持ちながらも、家庭・家族の中の一員として、地域や社会に参加し役割を担い、豊かな日々の生活が送れるような「作業療法」を提供します。
たとえ抱えた障がいの名前は同じでも、個人の生活暦や価値観・人生観によって受け止め方は様々ですし、「作業療法」に求めるものも十人十色だと思っています。
当クリニックでは、「どのような「作業療法」を求めていらっしゃるのか?」について、ご本人やご家族と十分にお話をしたうえで、2人3脚で治療にあたります。
当院における「作業療法」の対象となる疾患
一般リハビリテーションの作業療法
主に脳血管障がいなどにより、運動障がいや、感覚障がい、高次脳機能障がいが残り、日常生活や社会生活に困っておられる方を対象とします。
運動・感覚・高次脳機能などの心身機能の回復には、障がいの状態を評価した上でマンツーマンの個別のプログラムを組んで治療していきます。
具体的には徒手的な治療や運動療法、作業活動を用いた治療を行います。
日常生活能力の回復には、具体的なハンドリングによる動作学習訓練や環境調整・用具の工夫などを行います。
場合によっては動作だけではなく、行動を計画したり考えたりする認知過程の訓練も行います。
小児リハビリテーションの作業療法
脳性まひなど、主として運動機能に障がいをもつお子さんを、治療対象の中心としています。
自閉症スペクトラム障害や学習障害・注意欠陥多動性障害により、不器用さ・協調運動の困難さを示すお子さんについては、具体的な課題(箸操作・なわとび等)に対して必要に応じて支援を行っています。
子どもたちは、障がいから回復していくという過程以上に、障がいという特性を持ちながら「発達」していくという大切な側面を持っています。
「障がい」と「発達」という2つの側面を理解しながら、乳幼児期から青年期・成人期まで、それぞれの時期に必要な治療・発達支援を行っています。
マンツーマンの個別プログラムを中心とし、特定の治療理論にこだわることなく、個々のニーズに合わせて色々な方法を用いて治療を行っています。
それぞれの障がい特性と年齢、家族、生活基盤となる地域の資源と特性、学校環境などさまざまな視点からお子さんの発達をサポートできるよう、努力していきます。